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2015.06.14 未分類

告知は熱意と誇りがある。島津製作所二代目源蔵の口上書から

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島津製作所の創業当時の建物に入りました

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仏具の鋳物製造業から、教育用理化学機械の製作をはじめた島津製作所の創業者 島津源蔵氏は、西洋に頼らない日本の科学技術を希求する科学立国への強い志から、学校の教育現場で使う、実験機器を数多く開発・製造してきたとありました。

京都市中京区木屋町二条南に、島津製作所 創業記念資料館があります。
中に入ると、すぐ右手に、学校で使うレントゲン装置の完成と受注のための告知が、口上書という言い方で展示されてあります。

島津製作所さんの

社是、科学技術で社会に貢献する
経営理念、「人と地球の健康」への願いを実現する

の想いのなかでおこなう、告知には熱意と誇りが含まれていると気づきました。

口上書の実物

<口上書展示物の説明書>

店頭に掲げた口上書
(明治30年5月)

教育用Ⅹ線装置の完成を告げる

これは、教育用Ⅹ線装置を開発した際、顧客に向けて
店頭に掲げた口上書です。この装置を使用することで、
Ⅹ線が何たるか、その意義は何かを広く理解してもらい
たいという二代目島津源蔵の熱意と、装置完成に対する誇りが
うかがえます。

島津製作所 口上書

<口上書を現代文に訳した文章>

今日(明治30年ごろ)、科学は、
長足の進歩を遂げて様々な発明が、
日々おこなわれるようになりました。
このような時期に世間をあっと言わせ、
科学の世界に大きな光を放った発明に
明治28年12月ドイツのヴュルツウルグ
大学教授レントゲン博士の発見した
X線があります。
レントゲン博士は、ヒットルフ管、レナルド管、
クルックス管などの真空管を用いて、
陰極線を研究している内に
まだ世界に知られていない特殊な放射線が
存在することを発見しました。

その実験方法は、太いガラス管の
中の陰陽二極にアルミ製電極を作って、
管の空気を排気器で除去し、
気圧を水銀柱で一ミリメートルの
千分の一から一万分の一くらいの真空にして、
その両極を高圧発生の感応コイルに
接続します。
そこへ電気を通じますと、陰極から出た
電子線がガラス管壁に当たって
X線が発生します。
このX線は、目には見えませんが、
シアン化白金バリュームやカルシウム
タングステンなどに当たりますと、
フルオレスセンス光(蛍光)を放って、
写真乾板に感光する性質があります。
また紙、木版、金属の薄板を透かし、
動植物の肉体も通過します。
このようなことから、ガラス管面に人の手を
置いて、シアン化白金バリュウムを塗った
紙を見ますと、手の骨が現れ、写真乾板に
写せば、数分にして骨格を撮影できます。

このような空前の大発明でありますから、
ドイツ皇帝(ヴィルヘルム二世)は、
この偉大な発明家を宮廷に招き、
自ら勲章を授けられた由です。
これによってレントゲン博士の名声は、
世界のとどろき学術研究者にとどまらず、
多く人から賞賛されております。
エレキ(電気)の王様といわれる米国の
エジソン氏は、直ちにこの原理を応用して、
人体の病気の箇所を調べる機械を製作し、
また外科医は、その機械によって
身体の中に溜まっていた弾丸を取り出すことに
成功し、長年の持病を治すことができました。

我が国においても第一高等学校(現東大)
および第三高等学校(現京大)の先生方に
よって
すでにX線の研究がおこなわれていますが、
各地方においては、実験用の機械が充分で
ないために、いまだ研究に踏み出せないのが
実情で、たいへん残念なことであります。

島津製作所は、この点を憂慮して
何とか解決できないものかと考えおりました。
所内の実験室でX線の発生に成功しました昨年
(明治二十九年)から、装置の製作に苦心し、
多くの失敗と経験を重ねて、
ようやく満足できる製品が完成しました。
関心を持っておられる皆様の需要に応えられる
ものと自負しております。
ここに、その機械装置(教育用Ⅹ線装置)を
ご披露しますので、ご覧いただき、
Ⅹ線とはどういうものか、ご理解いただくと共に、
弊所のⅩ線普及にかける熱意の程を感じと
っていただきたいと存じます。

明治三十年五月
京都市木屋町二条南
島津製作所主敬白
口上書の展示物を何度も見ながら、ついに現代訳を写真に写して書き起こさせていただきましたが、シンプルに伝わるものがありました。

宣伝と告知・向上書との違い

宣伝は売り込みで、告知は価値の表明とご紹介していますが、
口上書を拝見していると、事実を誠実に伝えることが告知であり、

・時代の背景
・人に求められていること(進化創造への貢献)
・完成までの経緯
・そのものが何かの説明
・そのものの意義
・対象者への理解の浸透

がポイントであるように思いました。

【宣伝】という意味は、「事実以上に、また、事実を曲げて言いふらすこと」(goo辞書)なので、宣伝ではなく、経営理念に向かって日々おこなう活動を価値の表明として熱意と誇りを含んだ「告知」をしっかりしていきましょう。

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