一人ひとりが役割を発見し、
持って生まれた能力に気づいて、楽しく働き、楽しく生きよう
all-in-one-seo-pack
domain was triggered too early. This is usually an indicator for some code in the plugin or theme running too early. Translations should be loaded at the init
action or later. Please see Debugging in WordPress for more information. (This message was added in version 6.7.0.) in /home/weblogging/chiejin.link/public_html/sys/wp-includes/functions.php on line 6114一人ひとりが役割を発見し、
持って生まれた能力に気づいて、楽しく働き、楽しく生きよう
銀二貫 高田郁著 2009年6月10日発行
粋成会という地域密着工務店の社長さんが集まっておられた会(当時は4人)で読まれていた本をご紹介いただきました。
父を仇討ちで亡くし、大坂天満の寒天問屋の主人に銀二貫と引き換えに命を救われた武士の子が、商人として成長する姿を描いた人情劇。高田郁さんの本は、人の生き方、商人のあり方を書いてくださっているので、とてもためになり、勉強会の課題図書としてみんなで読んでいます。
ちえじん 星川真一郎
第1章:仇討ち買いでは、大坂の寒天問屋「井川屋」主人和助がなぜ、鶴乃輔を店の後継者として見込んだのかを想像したところでした。和助は、建部玄武が彦坂数馬を仇討ちしようとする場面に遭遇し、数馬は玄武に斬られて瀕死の重傷を負い、10歳になるその子鶴乃輔が玄武から数馬を守ろうとしていた姿をみて、この子(鶴乃輔)は、育ててくれた親を自分の命をかけても守ろうとしている。この子なら、店を任せられる、武士であろうと、商人であろうと、報恩の心を持つ人は繋いでいけると感じたのだと思いました。
第2章:商人の矜持では、まず“矜持”という言葉がいいなぁと思いました。“矜持”とは、自分の能力を信じていだく誇り、プライドとありました。あらぬ疑いをかけられる井川屋が、ズルをしていた店の主に代わって、謝罪する板長の嘉平に、和助は「主人の間違いを諫めるのも奉公人の務めだ」と諭す。料理人の嘉平さんに“矜持”が伝わった瞬間だと思いました。
第3章:真帆では、生きていくため、喰うために自分が寒天を扱う商いに携わっている松吉に対して小さな声で「しんどいな」と呟く場面が印象的でした。真帆は父の嘉平に頼んで寒天を使った料理を食べさせて目を開かせてくれる。嘉平は松吉に料理人として常に無いことをした理由として「寒天を扱うお前はんが、その寒天の良さに気付いていない。それやのに寒天問屋で寒天を売らなあかんのはしんどいやろう、可哀想や、真帆に言われたからや。と伝える場面ではぐっと来てしまいました。
第4章:同月同日の大火では、残念ながら嘉平さんは、松吉に「茹でて蒸した里芋を固められるほどの、今の倍の腰のある寒天ができたら、料理の幅が広がる」という言葉を残して亡くなってしまう。
第5章:再会では、火事のあと、琥珀寒を真似た紛い物を売る店で、顔の右半分がやけどで引きつられた真帆と再会するが、追いすがる松吉に「こんな仕打ち、むごい」と言い残して走り去ってしまう。
第6章:約束では、真帆が井川屋に訪れ、自分が真帆であること、お広の娘おてつとして生きていること、そしてお広の心が壊れないよう、明日からは道で会っても、自分は知らない女としてやり過ごして欲しいと願う。真帆は嘉平が言い残した「今の倍の腰がある寒天」を完成させて欲しいと言い、松吉はそれを約束し、兵衛の寒天場に修行に出して欲しいと和助に願い出る。松吉が腰の強い寒天を作るための、長きにわたる試行錯誤の日々が始まる。
第7章:さらなる試練では、またも大坂を大火が襲い、真帆とお広も被災したが、真帆は自分たちの無事を知らせるため、井川屋の戸口に簪を差し込み、そこに自分の手拭いをかけていた。「薄花色の手拭いと知れた。それは確かな意図を持って、そこに在った。刹那、松吉の脳裏に伊川屋を訪ねて来た日の真帆の姿が浮かんだ。そう、この手拭は・・・嬢さん」のところがなんともいえない二人の絆を感じました。
第8章:結実(けつじつ)では、松吉は試行錯誤の上、ついに強い弾力を生み出す糸寒天を完成させる。真帆との約束を果たし、お広の前で引き合わせ、松吉が堂々と団子屋を訪れることができるようになる。
第9章:迷い道では、天満宮へ寄進する銀二貫が貯まるが、孝三が手を回し、今まで使っていた丹後産の天草が使えなくなったため、来年は糸寒天が納められなくなったということを知り、その銀二貫を迷いもなく差し出す。そのとき和助さんは「お前はんのことや、~中略~、ええ天草を見つけたとして、それを伊豆から大坂へ廻船で運び、そこから大川沿いに船で運ぶ。その手はずを整えるんだすで。これくらいの銭は要る」「まだわかりまへんのか。お前はんの糸寒天にはそれだけの値打ちがおますのや。今、ここでこの銭を受け取ってもらわれへんかったら、井川屋は暖簾をおろさなあきまへん」という言葉を聞いて、商人らしさに感動させてもらいました。
第10章:興起(こうき)の時では、松吉が故郷の苗村藩に出かけると、貧しかった故郷の風景がすっかり変わっており、豊かな水田が広がっていた。建部玄武が銀2貫もの大金を差し出し、新田開発を提案した。そのおかげで希望を見いだした藩士たちは、刀を捨てて田畑を耕し、天明の大飢饉も誰も欠けずに乗り越えたという。そして、老人は土産にと村特産の小豆をくれた。松吉は、この29年の人生のすべてが報われ、赦されたと感じ、涙する。この部分で、銀2貫が生き金になったんだなぁと思いました。半兵衛が、伊豆産天草を仕入れる仕組みが成ったことを知り、松吉は、これまでの半兵衛の苦労と、苗村藩士たちの努力を思い浮かべながら、自分も何度挫折してもまた立ち上がってやると決意する場面では、人のがんばりを見て、自分もがんばろうと思えるんだなぁと感じました。
興起(こうき)とは、勢いがさかんになること、意気がふるいおこることとありました。また、感奮興起(かんぷんこうき)という言葉もあり、心に深く感じて奮い立つこととありました。いい言葉だと思います。
最終章:銀二貫では、真帆と松吉が協力して、練り羊羹をつくり上げる。その技術を公開し、自分が独り占めにするつもりはないと語る場面では、持ち場、持ち場の役割を果たすことの大事さを感じました。井川屋さんは寒天の卸として、寒天を使った素晴らしいものを開発し、つくり方を菓子店に公開し、それぞれが寒天を使った美味しい練り羊羹をつくって、お客さんに喜んでいただく。とても心に感じたところでした。82歳の和助さんが、善次郎さんに(銀二貫で鶴乃輔を買い取り、松吉に育て)「私はええ買い物、したなぁ」とつぶやく場面では、商人らしさを感じました。