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「僕たちのチーム」のつくりかた - 経営の黒字化に向けた業務受託 (株)ちえじん

一人ひとりが役割を発見し、
持って生まれた能力に気づいて、楽しく働き、楽しく生きよう

2023.06.19 書棚

「僕たちのチーム」のつくりかた

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「僕たちのチーム」のつくりかた
伊藤羊一 著 2022年11月18日発行

内容

多様性の時代と言われる現代では、リーダーは多様な価値観を持つメンバーをチームとしてまとめなければなりません。これからのリーダーは、自分が中心となって引っ張るのではなく、「個々の強みを活かしきるチーム」をつくることが重要な仕事です。このようにフラットな組織づくりに関連する書籍は多数刊行され、ヒットになっています。しかし、どれも理論的・抽象的な部分が多く、現場のリーダーたちは理想と現実の狭間で悩んでいることも多いでしょう。このような過渡期には、より実践的・具体的な方法が必要です。本書では、次世代リーダーの育成に従事し、さまざまな形でチームを作ってきた伊藤羊一さんの「個々の強みを活かしきるチーム」のつくり方を紹介します。これから目指すべきチームの姿とそのつくり方、そして、1on1、会議、プロジェクト、ゴール設定の仕方などをどう運営していくのかについて、実践的に説明していきます。これからのリーダーの立ち振る舞いがわかる1冊です。
引用:株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン  2022年10月21日 リリースより

「チーム」で動いていくときに、僕たちは何を目指し、何を考え、何を鍛えて、どう行動していったらいいだろうか。これが結構難しい。そもそもチームはどうあるべきか、ということも正解はないし、自分の想いとどう整合させていったらいいだろう、とか、人間関係の複雑さにどう対処していったらいいだろう、という悩ましさもあるだろう。組織やプロジェクト、コミュニティなど、形態によってまったくあり方は違うだろうし、目的によって動き方は全然違うだろうし、何より構成メンバーによって、動き方はまったく異なってくる。僕は決して「これが正解です」などとは提示できない。正解があるとしたならば、それは人それぞれ、チーム毎に異なる。常に個別解なのだ。そしてそれを考えるのはあなた自身だ。僕が提示するのは、ひとつの尺度に基づく土台だ。その土台に基づき、「では自分のチームではどうだろう」と考えてみてほしい。あなたがチームリーダーであっても、メンバーの一員であっても、考え、実行すべきことはある。そのきっかけを、本書を通じて掴んでいただけたら、と思う。
「はじめに」より一部抜粋

感じたこと、気づかせてもらったこと

1965年生まれの自分にとって、これまでのリーダー像とはまったく異なるものだなぁと思いながらも、なんとなく違和感に感じていたことが、はっきりと書かれていました。
伊藤羊一さんは、終章の最後に「社会はあなたがどう思おうが、確実にフラットになっていく」と断言されており、ヒエラルキー(階層)的な現状をなんとか変えたいという強い想いが伝わってきました。この本は、手法の紹介のように見えますが、”あり方”が根底にあればこそ、実践できる内容ではないかと思いました。本のなかに、飛躍的な経済成長を実現していた頃は、仕事には「正解」があり、それは経験を積めば手に入るものであり、上の人は経験をベースに経験の浅い人に対して「指導」をおこない、「改善」を要求し、「正確に早く」処理する能力を求めていたと書かれてあります。異常な成長時期を終え、これからはモノからコトをベースにした経済活動が主流になるなか、一人ひとりの想い、志、使命感の合流から、時代に必要な新しい価値が創造されることを考えると、リーダーのあり方、組織のあり方が変化していくのは必要なことだと思えてきます。まわりを見ると(2023年時点)、60歳以上の人は、自らの経験を伝え、正解をつくれるように社員を指導していく。そこには多様性より画一性が求められ、個性や想いに蓋をされてしまうケースも見られます。30歳代以下の人は、これまでとは真逆で、個性や想いから湧き出てくるものをもとに、人のなかにある質を引き出し、価値を創造していく流れが見受けられます。大変そうなのがその間の世代、40歳~50歳代のリーダーであり、とくに中小企業の社長さんは、これまで学んだり、見聞きしている従来のリーダー像で臨もうとすると、昔のように仕事の「正解」がなく、かつメンバー一人ひとりは、自らの力を発揮したいと思っているけれど、質が引き出されないため、悶々としてしまい、組織は停滞し、成果につながらないような気がしているのです。あらためて“人の成長”とはなんだろうと考える時期にきているように思います。これまでのように、社員さんが、経験を積んで正解に近づくために、改善を通して「正確に早く」処理する能力(スキル)を身につけて、会社の利益に貢献するのが“人の成長”なのか。それとも、社員さんが、大いなる存在とつながって志や使命感を自覚し、ほんとうの自分に近づいていくために、憤する心(感動)を持ち、まわりとの交わり(相互作用)から得られる気づき(教訓)から行動を起こし、価値を創造する力を身につけて、会社の利益に貢献するのが“人の成長”なのか。それこそ、正解はありませんが、この本からは、リーダーのスタンスの見直しがもとめられていると思いました。
ビジネス、経営のやり方は、量を求める(集客UP、売上UP)から、質を求める(人の質から価値を提供し、利益UP)へとシフトしはじめており、「正解」があった時代から、「正解」がなく、「創造」していく世界へ踏み込むのは、これまでに慣れ親しんだ人たちにとって、たいへんな勇気が必要だと思います。どう転換して成果につなげていくのか、ちえじんのメンバー、仲間の人たちと話し合いながら、ひとつ、ひとつ課題に向き合っていきたいと思います。(ちえじん 星川真一郎)

引用と振り返り

はじめに

「チームの力を発揮しきれていない」という悩みを抱えるチームリーダーのための本。メンバー全員がチームのことを「自分ごと」として捉え、一人ひとりの強みが発揮され、成果が上がる・・・そんなチームをつくるための、リーダーシップについて述べていこう。

・リーダーシップを身につけるためには、まず個人の力を鍛えることが不可欠。個人としてどう自分を鍛えていくのか。「自分自身をリードせよ」と説いている。知識やスキルを身につけるのが先ではない、まずは「想い」だ。

・「自分の想い」を持って主体的に生きようとすることで、理想の自分になるために知識を身につけ、スキルを鍛え、現場に飛び込んでチャレンジするようになる。チャレンジした結果、うまくいく場合もあれば、失敗する場合もあるだろうが、その結果を振り返り、抽象化するこで気づきを得て、明日への行動指針が生まれ、またチャレンジする、そうやって自分の力を磨いていく。それでも、僕たちは、ひとりで何かを成し遂げることはできない。自分自身をリードしていった先に、チームがある。一人でチャレンジしているうちに、リーダーの想いに共鳴して、一人、また一人と仲間が増える。そうしてチームになっていく。

・リーダーシップとは、チームをリードする人のあり方。では、マネジメントとは何か。動詞はマネージャー。これには「管理する」「経営する」という意味もあるが、「何とか成し遂げる、何とかやっていく」という意味もある。I can manage this situation(この状況ならなんとかなる)こんなニュアンス。

・マネジメントを「何とかすること」と考えると、マネージャーは「何とかする人」。何を「何とかする」のかを本書で語っていこう。

1章 個々の強みを活かすチームの「フラットな場」

ヒエラルキー(階層)型組織では、もう新しいものが生まれない。チームはメンバー一人ひとりが主人公である。これを強く意識しておきたい。メンバーが一人ひとり主体性を持ってアクションできているチームは強い。一方で、やらされ仕事でメンバーがロボットのように働かされているチームだとパフォーマンスが出ない。一人ひとりが主人公となり、イキイキと働いているチームをつくるのは、リーダーの仕事だ。そのために、肩書や年次に関係なく言いたいことを言い合える「フラットな場」をつくりたい。

・「ヒエラルキーが明確なチーム」は会議の場でも発言の順番が決まっていることが多い。若い社員が話すときには、チームリーダーやベテラン社員が経験をベースに「指導する」場になっていく。これでは言いたいことが言える場になるはずがない。以前はそういう「ヒエラルキー」に従って仕事をするのが当然、という時代でもあったと思う。仕事には「正解」があり、それは経験を積めば手に入るものだったからだ。経験を積んだベテランは「正解」を知っている。そして仕事のことはなんでも知っている。だから「管理職」につく。その「管理職」が話す言葉はすべて正しい。そういう社会だった。日本は「正解があるものを改善し、さらに高品質にし、低コストで製造する」ゲームに強かったので、飛躍的に経済成長を実現した。そのゲームにおいては「正解」があり、それをひたすら「改善」することがもとめられたため、クリエイティブな見識よりも、「そのものを、よく知っている」ことが重要だった。そういう社会においては、個人の能力も、その人が持つ「個性」などは必要とされず、ものごとを「正確に早く」処理する能力が求められた。一方で、現代は明らかに違うものが求められるようになってきた。もちろんメーカーは引き続きモノを大量生産する。しかし、もう大抵のモノは人々のもとに行き渡った。改善は引き続き行われるが、それに加えて「新しい価値」が求められるし、「なぜそれをやるのか?」という意味(パーパス:存在意義)が問われる社会になった。そして、便利にするだけでなく、「人々の幸福に貢献しているか?」と問われるようになった。これからは、「性能のよさ」のように数値で計測できる「正解」がない。「Why(なぜ、それをやるのか?)」は人それぞれ違うからだ。Why(なぜ、それをやるのか?存在意義)が問われるようになり、一人ひとりの頭の中、心の感じ方がより重要になってくる。

・タテ(ヒエラルキー)の社会 → What(モノ) → 大量生産(量) → 改善
・ヨコ(フラット)の社会 → Why(コト) → 意味(質) → 創造

・タテの社会においては、上位下達のコミュニケーションでよかった。そしてメンバーたちは、「正解」を「早く、正確に」やることだ大事で、個性など必要なく画一的で、「黙って上司の言うことを聞く」存在であればよかった。これがヨコの社会になると、新しい価値を生み出すために、一人ひとりの存在が大事になる。そうすると、1on1のコミュニケーションが必要とされるし、ダイバーシティ&インクルージョン(みんな違ってみんないい、の多様性を受け入れること)が求められるようになる。一人ひとりの発言が重要になる。だから「フラットなチーム、フラットな場」が必要になるのだ。

・多様性こそがイノベーションの源泉であり、成長の原動力だ。そういう社会を私たちは生きているのだ。

変動性、不確実性、複雑性で予測困難と言われる複雑な現代社会においては、チームは「なんでも知っているリーダー」が一人で正しいプロセスを導けるほど簡単なものではなくなっている。正しいプロセス、正しい勝ち筋は、みんなでつくっていくのだ。そのために、メンバー一人ひとりの意見が活発に飛び交う「フラットなチーム」をつくっていこう。

・「フラットなチーム」におけるリーダーの役割とは何か?正解をみんなで見つけていくのだから、「指導する」のではない(もちろん、多少は教えることもあるかもしれないが)。それよりも大事なのは、メンバー一人ひとりが成果を出すべく、サポートすることだ。だから、リーダーは「指導者」である必要はない。リーダーの役割を「ファシリテーターだと考えている。チーム全体を引っ張って「指導していく」のではなく、会議や1on1ミーティングで一人ひとりの想いを引き出し、何に心躍るかを感じ取ってもらい、本人が成長するサポートをしていく。あくまで主役はメンバーだ。メンバーの才能と情熱を解き放てば、チームのエネルギー総量は大きくなっていく。それが成果への道筋だ。簡単に言えば、「チームの力を最大化する」ということ。そのためにやるべきことは2つ。①環境づくり ②チームメンバー一人ひとりの才能と情熱を解き放つ

・①環境づくり:「メンバーにとって安全、安心な環境をつくること」「心理的安全性」。まず「来たくなる場所にすること」、次に「言いたいことが言い合えること」。それぞれのメンバーがお互いにリスペクトしている場所にしよう。

・②チームメンバー一人ひとりの才能と情熱を解き放つ:「一人ひとりに目を向け、一人ひとりの強みを引き出し、活かす」。リーダーは、n人のチームに対して、1:n(全体)にはたらきかけながら、同時に1:1(×n人)に、つまり一人ひとりにはたらきかけることが仕事なのだ。

・過保護になんでも解決してあげる、ということではない。メンバーが自分で解決するためのガイドをするということ、具体的には「メンバーに自分の課題を言語化し、認識してもらうことだ。

・リーダーとして何が最優先事項か、といえば、何より、「一人ひとりにはたらきかけて、メンバー一人ひとりの強みを活かしきる」ことだ。素晴らしいプレゼンテーション能力は必要ない。カリスマ性を持つ必要もない。ただただ、メンバー一人ひとりと向き合い、寄り添うことだ。

・有事は、follow me(志に従う、私についてきてください) 平時は、affter you(お先にどうぞ)

2章 指示よりも大切な「聴く」行為

・現代は、そんなリーダーが生き残れるほど甘い社会ではない。にんじんをぶら下げ、馬車馬のように働かせて結果に結びつけようとしても、もはや成果は出ない時代だ。メンバー一人ひとりの才能と情熱を解き放ち、みんなの知恵やエネルギーを結集して結果を出していくしかない。リーダーも選別される時代に入っているのだ。

・1on1の定義:マネージャー(リーダー)がメンバーのために定期的に時間を割き、メンバーの話に耳を傾けることを通して、目標達成と成長を支援する場

・1on1ミーティングは「メンバーのための時間」である。決して「リーダーのための時間」ではないのだ。

1on1ミーティングはリーダーが話すのではなく、基本はメンバーが話し、リーダーは聞く。まずは的確なアドバイスも必要ない。ただただ、たくさん話してもらうこと。

・なぜ、たくさん話してもらうことが大事なのか。リーダー側の利点としてメンバーの状況がわかり、相手に対する理解が深まり、サポートしやすくなることもあるだろう。だがそれ以上に、口に出して話をしてもらうことで、メンバー自身の思考が構造化されていく(具体的な形になっていく)、という効果がある。

話を広げる問いかけ、掘り下げる問いかけ

①5W1H

いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Where)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)

話を聞きながら、より話が深まりそうなものを選んで、聞いてみる。例えば「こう思ったんですよね」と話したら、「それを思ったのはいつ(When)のことですか?」とか、「いやな思いをしたんですよ」ときたら「どのように(How)いやな思いをしたんですか?」といった具合だ。すべての情報で5W1Hを明確にする必要はないが、ぱっと質問する際に活用できる。

②「具体と抽象」の軸

抽象的に「なんか気分悪いっす!」と言われたら、「具体的にどんなことを感じているの?」と聞いてみる。逆に「こういうことがあった」「こんなこともあった」と具体的な事象を並べられたら、「というのは?つまり?」と、抽象化を促す。抽象化とは、その具体的な事象をまとめて言葉にする作業だ。人間は思考するとき、具体と抽象を行ったりきたりする。つまり、具体的なことをいくつかまとめて、ある抽象的な感情や理解に行き着いたり、抽象的な感覚から、「これはなんでそう思うのだろう?」と具体的な事象を思い返したりしながら、自分の思考を構造化していく。だから、具体的な事柄だけで出てくるようであれば、抽象化してもらい、抽象的な言葉だけを言うなら、そこに紐づく具体的な事柄を探してもらうことで、よりたくさんの話を聞くことができるようになる。

③深掘りと広げる質問

相手に考えてもらい、話をたくさん聞くためのダイレクトな質問で「もう少し詳しく教えて」と深掘りを質問と、「他にある?」と広げる質問。話し手がたくさん考え、色々話せるようになる。聞き手が相手の思考をサポートしていく。

メンバーにたくさん話してもらったあと、そこから気づき(教訓)を得てもらうようにしよう。“経験”→“振り返り”→“教訓を引き出す(気づく)”→“実践する”

・質問を通じて、相手に気づきと自発的な行動を促す(コーチング)。リーダー側から「答え」を伝えてしまっては意味がない。経験が浅いメンバーにはティーチング(指導)が必要な場合がある。

・コーチング基本

まず基本は、「課題解決サイクル」をベースの流れとして、前回の1on1からの期間に経験したことを、気づきのための材料としていく。

①How?一週間どうだった?うまくいった?(いかなかった?)

②Wher?具体的にはどこがうまくいった?(いかなかった?)

③Why?それはなぜうまくいった?(いかなかった?)

ここまでをしっかりと考えてもらい、聞き手(メンバー)が、「あ、そういうことか!これが強みなんだ!」と気づきにつながったら、それをその後の行動につなげていってもらう。

④When?What?いつまでに、何をする?と行動のコミットをしてもらい、1on1を終了する。

これをひたすら毎週繰り返しているとメンバーがパターンとして受け止めてくれるようになる。もはやメンバーは、質問しなくても自発的にこの流れで内省(自分で振り返ること)を進めてくれるようになる。途中から話を深めて、気づきにつなげていく。そのためには、「自分が発した言葉を、自分でその場で振り返りながら、俯瞰して考えてもらう」とよい。

・1on1でよく使う質問

①もう一度聞くよ?

聞き手からの問いに対して、話し手の返答が曖昧な場合によく使われていた。何度も問うことによって、話し手の想いをしっかりと言語化するよう促す問いかけだ。

②「・・・」と考えているんだね。「〇〇」ってたくさん言っていたけど、大事なんだね。はいずれも、話し手に、自分の主張を客観的に捉えて、もう一度考えてもらうための言葉だ。こう聞くと、相手は、「あ、そうですね。これは私にとって大事なことなんです」とか、「そうでしたか、確かに。あまり意識していなかったですが、最近強く思うようになったのかもしれません」と、なぜ自分がこう話しているのかを考えるようようになる。深い気づきにつなげていくには、たくさん話してもらうだけではない。このように、自分の言葉を俯瞰して考えてもらうことが大切だ。そのためには、「間」をとることも必要になる。僕たちはつい、聞き手も話し手も、間を空けることを恐れてしまうか、それでは深い気づきに至らないかもしれない。問われたあとの間(答えを出すのを待ってくれている)

3章 みんなが主体的に話す「会議」のつくりかた

・会議とは
n人がフラットに議論(話し合い)をし、結論を出していく場。チームが進んでいくうえで生じた問題、課題を解決し、進む道を明確にする時間。

・対話とは
「ただ話し、ただ聴く」のが基本。話し手と聞き手で、「共通の結論」を引き出す必要はない。話し手が自分なりに何かを感じ取ればよくて、結論がなくてもよい。話すことそのものが大事なのだ。話し手は想いを言葉にし、聞き手はうなずきや質問を通じて、話し手の気づきにつなげていく。それが対話。

・議論とは
「あるテーマについて話し合い、共通の結論を決めていく」。あるテーマについてイシュー(解決すべき課題)を定めて、それに対して出席者がみな意見を出し、それぞれの意見に対し賛否を話し合い、なんらかの形で決着がつけられ、最後には出席者は合意し、共通の結論とする。そして会議を終えたら、その共通の結論をみなで実践していく。

・リーダーが出席者に対して目標が未達であることを詰めまくる「詰め会議」。目標未達の場合は「ダメじゃん」と非難し、「それでどうするの?」と詰め、リカバリー策を出させる。「これから検討します」などと言おうものなら、さらに罵倒する会議。詰められるのが怖いから一生懸命リカバリー策を考える。しかしこれも無意味な会議だ。詰める側は、メンバーを恐怖で支配できると感じているのかもしれないが、大勢の前で個人を罵倒すると思考停止を招くので、結局効率が悪くなる。詰める側は「プレシャーに感じて成長してほしい」と思うのだろうし、詰められた側も、時間が経つと「あの経験が自分を強くしてくれました」などど言うこともあるが、それは幻想であり、精神的に追い込むのは、長期的に見れば悪手だ。詰めるのは、ダメリーダーがうまく成果が出ない感情のはけ口にしているに過ぎず、そんなものはやめたほうがいい。とにかく、会議は「みんなでフラットに議論して、決める場」

・活発に意見が出る、ファシリテーションのステップ

たくさんの意見を出してもらい、議論を活発化したいのであれば、リーダーは議論のファシリテーター役に徹しよう。

 ①事前準備 イシューを共有する

参加者が考えるための情報を共有しておく。

イシューは、「何をテーマに議論する」ということではない。「何を解決すべきか」について疑問分の形にし、参加者みなが同じ方向で検討できる「解像度が高い問い」にする。「営業方針について」ではなく、「営業方針を出すために私たちはまずどこから取り掛かるべきか」というように、疑問文の形で「答えが出る」問いにしよう。これなら必ず「営業方針を出すために、まず〇〇から取り掛かるべきだ」という意見で揃う。

・検討するために必要な情報も、なるべく会議の前に共有しておく。

・【提示されたイシューに対する結論】 → 【その結論に対する根拠】 → 【その根拠を説明する事実や事例】で、主張を構造化する。

・「(事実)だから(根拠)」「(根拠)だから(結論)」と読んでみて、意味がつながるかどうか、すなわちロジカルかどうかをチェックしておくことも重要だ。

②会議スタート

たくさん話してもらうために全力を尽くす

・ファシリテーションは、会議を進めるために「さばく」ことが役割だが、それは決して、自分の意思に従って会議を誘導することではない。ファシリテーションの中でリーダーの意向が見え隠れして、自分が持っていきたい方向に誘導していると感じたら、参加者はその方向に忖度した意見を言うようになる。それがポジション(役割)の持つ力だ。最終的にジャッジはしても、自分の意向は可能な限り出さない状態にしたい。意見がある場合には、「自分の意向はあるものの、本当にそれでいいのか自分としても疑問があるから、そこは自由に話し合ってほしい。僕は中立でいるから」と最初に宣言して臨むのもだ。いずれにせよリーダーの意向の通りに誘導する会議は不要だ。

③序盤

全員に意見を出してもらう

・会議の肝は、意見の量だ。当たり前だが、ここで会議の成否は決まる。意見がある人だけ挙手してもらって答えてもらうのではない。全員に意見を出してもらう。それも丁寧に、じっくりと。そしてその順番は、ファシリテーターの腕の見せどころ。

・話してもらうことは、結論と根拠。その後は、できれば前に発言した人と意見がつながるような人に発言を促したい。「今の意見に賛成な人、重ねて話してください」と言ったりしながら、同様の主張を重ねていくとよい。

④中盤

建設的に議論する

・基本、「議論はピラミッドストラクチャーのすり合わせ、戦い」みんなの意見に基づいて、賛成、反対、2つのピラミッドをつくる。

⑤終盤

結論を出す

会議で議論した後に出すべきは、結論のピラミッド。みんなで一つのピラミッドをつくっていくのだ。

・最終的な決着はどうすればいいか。徹底的に議論をし尽すか、多数決にするか。リーダーがジャッジするか、そこを参加者に考えてもらう。

・民主主義は「多数決がすべて」ではない。それは最後の手段なのだ。簡単に結論を出さないで、徹底的に話し合うことが大事。

・大事なのは、「結論を出すこと」だけでなく、結論が出たら、みながそれに従うことだ。

・いい会議を行ううえで大事なのは、やはりここでも同じ。フラットな場をつくる、ということだ。

・立場が上の人でも、人間としてえらいだけではない。マネジメントという機能を持っているにすぎない。だから会議の場ではフラットに。一人ひとり全員に、1on1と同じように、たくさん話してもらう。そして最終的に、会議参加者の共通の結論をつくっていこう。

4章 チームでゴールを決める

・目指すものがあるから、進むことができる。チームというのは、ゴールを共有しているからチームである。これは当たりまえの定義だ。そのゴールを目指しているから一緒にいる。「ワンチーム」という言葉がある。それはチームみんなで仲良くする、ということではない。共通の目的、共通のゴールのために集まっているチーム。それがワンチームだ。

・チームのミッション、ビジョンを決め、共有しよう。チーム単位で考え、共有する。

ミッションは、自分たちチームの使命、役割。つまり、このチームは何のために存在するのかということ。何に心躍るのか、何のためにガンガン働けるのかは、人それぞれ違う。その「何のため」を、言語化していく。

ビジョンは、ミッションに基づき行動した結果、実現すべき未来の姿。未来の姿をビジュアルなイメージで表現したものだ。

・チームのミッションは常にチーム内でブラッシュアップしていいし、するべきなのだ。

・「会社が目指すゴールを踏まえつつ、我がチームはどういうゴールを目指すのか」ということ

・ゴールは、長期、中期、短期の3つを考える。

長期ゴールは、ビジョン。仕事をする際に目指すべき「北極星」

中期ゴールは、確実に達成したい中期(最長でも5年)に設定するゴールでイメージとしては、「登るべき山」

短期ゴールは、北極星(長期ゴール)を目指し、登るべき山(中期ゴール)を登頂する。「そのための第一歩はどこからアプローチし、どこまでひとまず登るか」というステップが短期ゴールだ。

→北極星はどこか(長期ゴール)

 例:Zホールディングスで働くみながイキイキ働いているようにする

→登る山はどれか(中期ゴール)

 例:社員全員がZアカデミアを知っており、年に一度は参加している

→まず登りはじめる登山道はどこか(短期ゴール)

 例:今の3倍のセッションを実施する

このように3つの軸でゴールを設定することで、メンバーとも共有しやすくなる。

・フラットなチームで成果を出していくためには、チームで決めた「定性的なゴール」と「数値目標」を一致させることが重要だ。定性的なゴールを目指すことで、数値目標を達成できるようにしていく。

 例:定性的なゴールが「お客さまを絞り、限られたお客さまに極上のサービスを提供する」だった場合、それを数字化する。

 →どれくらいのお客さまを絞る? →売上上位半分のお客さまを絞ろう

 →極上のサービスとは? →まずは、提案回数を2倍にしよう

結果として、半分に絞ったお客さまの売上はどのくらいになるのか、提案回数を2倍にしたことでどのくらいの売上につながるだろうか、というシナリオを想定し、売上目標につなげていく。

・埋められない差を埋めるのは、リーダーの仕事。その差を埋めるために新しい試み、仕掛けを「発明」し、それを実行するということだ。

これまでやっていることをベースに、「堅実に」積み上げていったら、会社が目指す目標数値と差が生まれる。これは組織の常だ。だからその差を認識し、そこを埋めるために「頑張る」のではなく、仕組みや仕掛けをつくり、チームで取り組む。それが新しいチャレンジにつながる。

6章 みんなで踏み出す

・リーダーに求められるのは、俯瞰、つまりマクロの眼を持ちながら、チームメンバー一人ひとりの状況や動きをミクロの視点で毎日見続けることだ。

リーダーとして、常に「自分なりの答え(仮説)」を先回りして考えておくということ。いつ指示や意見を伝えることになってもいいように、常に持ち続けておく。すべてを知らずに不完全な情報でも、仮説として答えを出し続ける。

終章 あなたはどうする?

分かれ道の選択肢

「このまま一人でやり続けたほうが早くて楽だから、自分ができる範囲で、自分だけでやればいい」という選択肢と、「今より大きな仕事をしたいからチームをつくって成長させていきたい」という選択肢。これは人それぞれの判断だ。しかし、「早く行きたいなら一人で行け、遠くへいきたいならみんなで行け」というように何か大きなことに取り組みたいなら、チームをつくって踏み出すほうがずっといい。

「遠くへ行ける」チームの共通点を一言で言い換えていくと

1.リーダーは、メンバーを活かすのが仕事
2.そのために、フラットな場をつくる
3.そして、メンバーの想いや考えを聴く
4.会議の場でもフラットに意見を出し合う
5.チームはゴールを共有しているからチームなのだ
6.そして、それは組織をまたがる場合も同じ
7.踏み出し、続けることが大事

リーダーとして、チームをつくっていくとき大事なのは、決してスキルではない。

あなたのすべきことは簡単だ。

・ヒエラルキー(階層)ではなく、フラットであれ

・自分ではなく、メンバーを活かそう

・そのために話を聴こう

ほぼ、これだけだ。マインド、つまりスタンスの問題だ。

もし、スタンスを決めるのが難しいと感じるならば、あなたの中に次のような「変えられない固定観念」があるのかもしれない。

・上司は部下より「えらい」という感覚

・部下は、自分を活かすための存在である、という感覚

・部下に、自分の考えを話すことが大事である、という感覚

ヒエラルキー(階層)が好きか、フラットな社会が好きかは価値観の問題だから、どちらでもいい。上司は部下よりえらいのだ、と思うのも自由だ。

しかし、社会はあなたがどう思おうが、確実にフラットになっていく。

業界や会社の個別事情はあれど、最終的には、フラットなチームづくりが必ず主流になる。今も既に進みつつあるが、これから先、加速度的にさらにスピードをあげて、フラット化が進むことは確実だ。

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